婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
このツインタワーには、2種類のエレベーターがある。ひとつはオフィスエリア用のもの、もうひとつは、エリート外交官も出入りするレストランのある高層フロアに通ずるVIP専用のもの。私はもちろん、普段人が滅多に来ないフロアの奥まったところにそれはある。
そもそも利用するのに会員証が必要なくらいセキュリティも厳しくて、私は一生関わることはないと思っていた。それなのに、どうして今目の前にそのエレベーターが?

状況が分からなすぎて目を白黒させる私をよそに、翔くんは慣れた様子で小さなカードをかざした。
なんで手馴れてるの…?というかなんで会員証を持ってるの!?

え、翔くんてそんなに上流階級の人だったの?それなりの名門だろうとは思ってたけど、まさかのVIPレベル?名門中の名門って、結構数限られると思うんだけど…!
聞きたいことがありすぎて、何も言えない。秒で扉が開いた箱に乗り込んで、翔くんは迷わず行先を最上階に設定する。

「…一応言っておきますが、これは俺の親戚のもので、俺は全然会員とかじゃないっすから。 顔が効く人なので、一日だけ借りました」

そっか。その高級感漂う小さなカードって、そんな簡単に貸し借りできるやつじゃないと思うんだよね。それに、口調が変だ。なにか誤魔化してるの、バレバレだよ。
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