婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「私がいながら他の女性と2人きりでディナーだなんて、見損なったわ」

美女の言葉にぴくりと反応する。今なんて?私がいながらって言った?

「おい、誤解を招くような言い方をするな。 すみません、小春さん。こいつ…この人はただの幼馴染で、決してそういう関係では――」
「ちょっと、それだけじゃないでしょう? 誤魔化さないで本当のことを言ったら?」
「栞! いい加減に、」

おっと、下の名前で呼ぶんだ。翔くんに、こんなに親しい女性がいただなんて。しかも美女。というか、別に私に弁明しなくていいのに。私は翔くんの彼女でもないし、ふたりがどういう関係でも気にならない。……はずなのに。ちょっと、気になってしまう自分がいるのも事実だ。含みのある言い方をする美女に、何か隠したがっている翔くん。お互いに名前で呼び合う関係。これはただならぬって感じじゃない?

「ふーん。翔、その人のことが好きなのね。だったら尚更、私のことは紹介しておいた方が後々楽だと思うけど」

なんと。女の勘ってやつだろうか。あっさり翔くんの気持ちを察してらっしゃる。これ、私当て馬的な立場にならない? 恋敵とかなんとか言って、美女とやり合うことにならない? そんなの困る!私は翔くんのこと好きじゃないって言わなきゃ!

彼は美女の言うことに観念したのか、一瞬眉間に皺を寄せて、それからため息をついた。

「小春さん」

「翔くん、私は…」

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