婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「あ、ねぇクレープ食べたい! ほら、並んでないし今のうちに早く!」
「え、ちょっと待ってくださいよ小春さん!」

ぐいぐい引っ張って、ぱっと目に入ったクレープ屋さんに行く。完全に勢いのままいちごチョコとアイスブラウニーのクレープを買った。

「美味い…」
「いちごも美味しいよ! 食べる?」

翔くんがクレープから目線を上げて私を凝視する。それから気づいた。

「次! 買う時はいちごに…――」

すっと翔くんの手が私の手を掴む。1口、いちごのクレープが彼の胃袋に……

「ん、美味いです」
「それは…良かったです」
「小春さんも1口どうですか?」

ほら、とクレープが目の前に突き出される。駄目、駄目よ私。さっきのオムライスは回避したんだから、今回も……

「っ、…おいしい」

あああばか。私のばか!何食べてんの、アイスブラウニー美味しいけど…!

翔くんがふっと微笑む。良くない。このままだと、私の意思がどんどん弱ってしまう。
これを食べたら、翔くんのほしいものを調達して早く帰ろう。…同じ家でも、部屋を貸してくれているから1人にはなれる。今日明日は引きこもりを決め込むんだ。趣味に集中したいからって言えば、優しい彼はそっとしておいてくれる。ああでも、なんの趣味を作ろうかな。

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