婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~

迎えた土曜。この一週間、遥太と翔くんのことでそわそわと落ち着かない日々を過ごした。遥太が失礼な態度をとったらどうしようとか、付き合ってはいないことがバレたらどうなるんだろうとか。私が一人悩んでいる間、翔くんは特に気にした様子はない。それどころか楽しみにしている気さえする。
待ち合わせはBCストリート沿いにあるカフェだ。私たちの方が先に着いて待っていると、遥太がやってきた。

この2人が対面することになるなんて…私は不思議な光景を見ている気分だった。

「こちらが、夏樹翔さん。 こっちが弟の遥太です」

俯瞰している暇もなく、この場をとにかく平和に収めるべく二人を順に紹介する。

「初めまして。お姉さんとお付き合いをさせて頂いています、夏樹翔といいます」

朗らかな笑みで翔くんが応じた。遥太は無愛想なまま言う。

「…一色遥太です。 夏樹さんは姉のどこが好きなんですか?」
「遥太!? いきなり何を…!失礼な態度をとるなって何度も…、」
「姉ちゃんは黙ってて」

この生意気なのは誰の弟!?誰に似てそうなったわけ!? 今まで私の交友関係にこうも干渉してきたことがあっただろうか。

「お姉さん…小春さんは、人のことをよく見ていて気遣いを絶やさない優しい人です。小春さんの下で働くことになってすぐの頃、僕は小春さんに救われました」

翔くんは遥太の質問に狼狽えることなく答える。しかもなんだか聞いた事のない話だ。

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