余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「アンタ、名前は?」

 予想外の問いかけに驚きつつも少々気恥ずかしくなる。自分は挨拶すらまともにしていなかったのかと。

「ふふっ、これは大変失礼を致しました」

 エレノアはカーテシーをして地面に座ったままのユーリと目を合わせた。

「エレノア・カーライル。ご覧の通り、『聖女』の職を奉じております」

「エレ……ノア……?」

「はい。エレノアです。以後お見知りおきを」

「ふーん……」

 口をもごつかせている。エレノアの名をキャンディーか何かに見立てているかのように。

「それではね。どうぞお元気で――」

「オレ、もっともっと強くなるから!」

 去り際、ユーリが切り出した。彼は立ち上がりしっかりとエレノアを見つめている。肩に、全身に力を込めて。

「だからその……っ、待ってろよな!!!」

 エレノアの表情が華やぐ。扉が開いていく。ゆっくりと大きく。

(……ダメよ。ダメなのよ)

 我に返って慌てて閉じた。そして、自らを説き伏せるようにして反芻させていく。三大聖教一族・カーライル侯爵家の令嬢としての責務を。

(夢は夢のままで)

 エレノアは目を伏せて小さく深く頷いた。再びユーリに目を向けてそっと微笑みかける。

「ありがとう。心待ちにしております」

 そうして思い出へ。これ以上の進展はないと――そう思っていた。にもかかわらず、ユーリはプロポーズに踏み切った。より明白な約束を求めてきたのだ。

(悪戯好きな先輩達から焚きつけられたのかもしれないわね)

「よっしゃ! よっしゃー!!」

 プロポーズが成功したのが余程嬉しかったのだろう。ユーリは無邪気にぴょんぴょんと跳ね続けている。

 胸が痛む。けれど、きちんと伝えなければ。エレノアは意を決して口を開く。
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