余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
 母親は薄い金髪に栗色の瞳。父親は紅髪に若葉色の瞳をしていた。

(ユーリはお母様似なのね)

 大きな瞳、小ぶりな目鼻口。パーツの形から配置に至るまで母親と瓜二つだった。負けん気が強そうなところもよく似ている。

 一方の父親は糸目で、薄くも逞しい体をしていた。一見すると穏やかで控えめな印象を抱く。ただ、今は怒っているためか少々威圧的だ。

「うわっ!? 父ちゃん!! 何すんだよ!!」

 父親は間髪入れずにユーリを担いだ。彼の尻がエレノア達の方に向く。そこに母親が平手打ちを見舞った。所謂『お尻ぺんぺん』だ。ミラを起点に笑いが伝播していく。

「ってぇ!!? ~~っにすんだよ、ババア!!」

「愚息が大変ご迷惑をおかけしました」

「私どもの方でキツ~く言って聞かせます! ですので、その……何卒ご容赦を……っ!!」

 夫婦は頭を下げるなり走り出した。一刻も早くこの場から立ち去りたい。そんな思いがひしひしと伝わってくる。

「っ、エレノア! 昼の2時に村を出るんだよな? 後で見送りに行くからな――てぇッ!?」

 父親がユーリの額を叩いた。余程痛かったのだろう。額を押さえて悶絶している。気付けば三者は卵大に。会話も聞こえなくなった。

(ご両親の真意は掴めなかった。ユーリを愛しているからこその否定なのか。あるいは村の農家としての責務からの否定であるのか)

「聖女様」

 不意に呼びかけられた。ペンバートン家の家令だ。優しく包み込むような笑顔でこちらを見ていた。

「そろそろ邸に戻られては? こちらで村の案内は大方済みましたので」

 言わずもがな気遣ってくれたのだろう。エレノアは彼の厚意に甘えることにした。
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