余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ごめんなさいね。もっと早くにお伝えをすべきでした」

「そんな……っ、苦手なことなんて中々言えませんよ。恥ずかしいし、悔しいし……」

 ミラは顔を俯かせた。罪悪感に暮れているのだろう。エレノアの気持ちが痛いほどに分かるから。

「そうね。でも、今はとっても軽やかな気持ちよ。もっと早くに話せば良かったと心底後悔するほどに」

「エレノア様……」

 ミラの濃緑の瞳がじんわりと歪んでいく。エレノアはそんな彼女を宥めるようにそっと頭を撫でた。

「貴方だからよ、ミラ」

「う゛うっ……! エ゛レ゛ノ゛ァ様ぁ~~~!!!」

「あらあら! ふふふっ」

 ミラは大きな音を立ててエレノアに抱き着いた。濃緑の瞳からは大粒の涙が零れ落ちて、エレノアの白いカソックを濡らしていく。

 こんなふうにミラは思うままに感情を表現する。エレノアはそんな彼女の気質を美点と捉えていた。

(この子の言葉には、示してくれる感情には嘘がない)

 だからこそ信用を得られる。加入して一週間足らずで一行に馴染みつつあるのだろうと思う。

(願わくば、これからもこのままで。ミラがミラらしくあれますように)

 エレノアは胸の内で小さく祈り、ミラの肩を叩いた。

()()()()()()()()()()()()いけませんね。わたくしも見習わなければ」

「エレノア様……?」

 エレノアは笑みを湛えたまま立ち上がり、自らの手で衣服についた土を払った。

「さぁ、参りますわよ!」

 エレノアは瑠璃色の瞳を滾らせると、その勢いのまま足を踏み出した。

 お世辞にも早いとは言えず、騎士達からすれば歩いても追いつけるような速度。傍から見れば滑稽だが、彼女を嗤うものは誰一人としていなかった。

 皆それぞれに胸を温めている。ミラと隊長に至っては涙を浮かべていた。
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