余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ペンバートン卿! お待たせを致しました」

 エレノアはとても晴れやかな表情で頭を下げた。伯爵は瞳を温かに、首を小さく左右に振る。

「いえ。こちらこそお待たせをしてしまい、申し訳ございませんでした」

「とんでもございません」

「ユーリにもお気遣いをいただいたようで。本当にありがとうございます」

 領主邸にいたはずの伯爵がなぜ? 疑問符を浮かべるエレノアに対し、伯爵は手にしていたオペラグラスを揺らしてみせた。小さな謎がふわりと解ける。

「いいえ。わたくしの方こそ素敵な夢を見させていただきました」

 エレノアが零した笑みは軽やかなようでいて、どこかしっとりとしていた。彼女の事情を知る伯爵は悲痛な面持ちに。他の皆も同様に表情を曇らせる。

「さぁ参りましょう。2時にはここを出なければなりませんので」

 エレノアが努めて明るく促したところ、伯爵も快く応じてくれた。

 その後、邸の応接間で2時間ほど会談。昼休憩を取った後で馬車の元へと向かった。

 周囲には護衛達が乗る馬も控えている。馬達は髪の毛のような美しい尻尾を高く振り、すんすんとご機嫌に鼻を鳴らしていた。

「この馬たらしが」

 隊長が苦笑混じりに零した。その視線の先にはビルの姿がある。
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