余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
 時を経るごとに村が遠ざかっていく。それに伴って伸びるエレノアの手。その先には白い革製のウエストバックがあった。

 これは所謂『魔法収納』。大変貴重なもので、旅に出る際に長兄・ミシェルから譲り受けたものだった。ユーリから貰った花も、ガラスケースに入れてこの中にしまってある。

 このバックの中の時は非常に緩やかで、ほぼ静止に近い状態。食べ物や生花等であれば半永久的に保存することが出来るのだという。

「う~~~ん、う~~~~~~~~~ん………」

 ミラが唸り声を上げた。いつにない神妙な顔つきで考え込んでいる。彼女らしからぬその姿に、エレノアは堪らず笑みを零した。

「ふふっ、どうしたの? 何か悩み事でも?」

「いやね、何とかしてエレノア様とユーリをくっつけたいなぁ~と思いまして。何かいい方法ないですかね?」

 胸の奥がじんわりと熱くなっていく。彼女はまだ粘る気でいるらしい。

「…………………勇者。うん。やっぱ勇者しかないよね」

「えっ?」

「ほらっ! やっぱ勇者って、一番派手で目立つ英雄なわけじゃないですか。そんな凄い人なら庶民だから結婚させません! なんて言われないと思うんですよね」

「ふふっ、確かにそれも一理あるわね。でも、勇者は本当に希少なのよ。王国の総人口50万人に対して、勇者はたったの3人。それも平民出身の勇者は5年ほど前に殉職されたルーシー様を最後に確認されていないの」

「でも、平民出身の勇者がいないわけじゃない。でしょ?」

 ミラは子気味よくウインクをすると、勢いよく馬車の窓を開けた。彼女の視線の先、最も近いところにはレイの姿がある。
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