余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
 あれはモンスター固有の魔法・闇魔法の残滓だ。

 不思議なことに、モンスターが司る魔法は人族が司るものとさほど変わりない。

 だが、一つ大きな違いがある。そのいずれにも闇属性が付与されている点だ。程度によっては傷の治りを悪くしたり、悪化させることもある。

 そのため、癒し手はまずこの靄を払う。ご多分に漏れずエレノアも。彼女の手元、緑色のオーラを受けた靄がすーっと薄れて消えていく。

「傷口からして……おそらくはバトルマンティス。カマキリに似た形状の化け物の仕業だな」
 
「何だと!?」

 隊長や騎士達、ついでにレイやビルも驚愕した。エレノアとミラにはその理由が分からない。ゼフに解説を求めると快く応えてくれる。

「バトルマンティスは、脅威ランクAのモンスターなんです」

「なん……ですって?」

 上から数えて五番目。勇者パーティーに属するようなトップクラスの戦士達が相手にするような魔物だ。

「無論、この地域で確認されたのはこれが初めてのことです。ったく、どっから湧いたんだか……」
 
 彼が深く息をついたのと同時に2つの魔方陣が消えた。治療完了の合図だ。血で濡れてこそいるものの傷はすっかり塞がったように思う。

「聖女様? お連れの方……?」

 青年の目が開く。意識は未だ朦朧(もうろう)としているようだ。エレノアは(いたずら)に刺激しないよう気を配りながら声をかける。

「ゆっくりと体を動かしてみてください。おかしなところはありませんか?」

 青年は言われるまま腰と腕を動かした。痛みもなければ違和感もないようだ。エレノア、ゼフ、青年の3人は揃って胸を撫で下ろす。

「っ、そうだ! 村! 村が魔物に襲われて――」

「存じております。ロナルド」

「はっ」

 隊長は青年から村の状況を聞き取った。その後、レイやビル、ゼフを始めとした騎士達へと目を向ける。

「レイ殿は広場で応急処置を。ビル、ゼフ、サッチ、ギャビン、ルーサーは自警団に加勢。団員の指示に従え」

「「「「「御意」」」」」

 返事をするなりレイとビルが馬からおりた。

「えっ? 何で?」

「目、(つぶ)っとけ」

「はい?」

 戸惑うミラを他所に、レイは足元に青い魔方陣を展開。ビルは白い霧がかったオーラを纏った。

「きゃっ!?」

 直後、凄まじい突風が吹き荒れた。エレノアも堪らず目を閉じる。

「くっ……えっ!? あっ、……あれっ!?」

 目を開けた時にはもう既に2人の姿はなかった。
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