余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
 後を追うように馬が駆けていく。騎乗しているのは隊長から指名を受けた4人の騎士達だ。

 ミラはそんな彼らの背をぼんやりと見送り、すっと地面に目を向けた。そこには足跡が1つ。よくよく見てみるとかなり深い。少なく見積もっても10センチはありそうだ。

 このあたりの土はかなり硬い。通常歩行であれば刻まれる足跡は精々深さ2~3センチ程度。相当な強さで蹴らなければああはならない。

「わっ! わっ! わーーーー!!!!」

 ぼんやりとしていたミラの表情が一変して溌剌(はつらつ)としたものになる。

「飛行魔法に(はやて)じゃないですかッ! しかも何なんですかあの速さ!! きゃー!! 賢者と剣聖って、あれマジだったんですね!!」

「ふふふっ、ええ。レイが賢者。ビルが剣聖ね」

 賢者は魔術師の、剣聖は剣士の最高位。勇者、聖者/聖女とは異なり初級、中級、上級と段階的に位を上げてライセンス取得に至る。その数は『聖者/聖女』についで少ない。

 賢者は魔術師15万人中8人、剣聖は騎士20万人中11人といった具合だ。パーティーの主力であるのは勿論のこと、勇者の指南役を担うことも多々ある。

「うへへ~っ。()()な上につよつよなんて、もうサイコーじゃないですか♪」

「おんぶに抱っこではダメよ? わたくしは勿論、レイもビルも貴方に期待しているんですからね」

「もっちろん! お任せください」

「ふふふっ、その意気よ」

 エレノアはミラの肩を叩くと、「お先に馬車へ」と耳打ちをして先ほどの青年の元へと向かった。
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