余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「一つお訊ねしたいのですが……よろしいかしら?」

「あっ、はい! 何でしょうか」

「ユーリは? ユーリも防衛戦に加わっているのでしょうか?」

 青年の話では、自警団は守備隊と攻撃隊に分かれたとのことだった。エレノアとしては言わずもがな守備隊にいてほしいとの思いが強くあったのだが――叶わなかったようだ。青年の表情が重たく沈む。

「はい。止めたんですが、攻撃隊に……」

「……そう」

 心中穏やかではないものの口元からは自然と笑みが零れた。いくら言葉を尽くしたところで、あの血気盛んな少年を止めることは出来ないだろう。そんなふうにして半ば諦めてのことだろうと思う。

「あっ、アイツはあれで結構やりますし、団長もイゴールさんも気を配ってくれているので……その……すみません。大丈夫だとは断言は出来ないんですが……その……」

「ふふっ、ありがとう」

 青年の優しさが身に沁みる。ユーリは人に恵まれている。エレノアは一人しみじみと実感した。

「さぁ、急がなくてはね」

「……はい」

「ご迷惑でなければ馬車に。傷は癒えたとはいえ、まだお辛いでしょう」

「お気遣いをいただきありがとうございます。でも、大丈夫です。お陰様でもうすっかりいいので」

「分かりました。ですが、どうかご無理はなさらないで。お辛くなったら直ぐに仰ってね」
 
 互いに礼をし合った後で、エレノアは馬車に乗り込んだ。

「わたくしに構わず、馬の負担にならない程度に飛ばしてください」

「かしこまりました」

 御者は大きく鞭を振るった。馬車がガタガタと激しく揺れる。エレノアは亜麻色のカーテンに掴まりながらひたすらに祈り続けた。ユーリと、村人達の笑顔を思い浮かべながら。
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