余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「……っ」

 エレノアは小さく咳払いをした。照れ隠しだ。慣れていないのだ。世辞でも皮肉でもない、ありのままの感謝と賞賛に。

 けれど、苦手なわけではない。むしろ嬉しいぐらいだ。それこそ小躍りしたくなるほどに。

「こっ、これは聖者ないし聖女のお方のみが扱える力。王都に張られているものと同じものですね?」

 問いかけてきたのは件の青年。救援を求めてきたあの青年だった。彼の名はリンク。16歳。黒髪、釣り目の中肉中背の青年で少々神経質な印象を受ける。

 しかしながら、その実はとても勇敢で機転の利く青年であるようだ。聞いた話によると、エレノア達への救援要請も彼の発案。団長に進言し実行に移したのだと言う。

(自警団の未来のブレーンといったところかしら)

 10年後、ユーリが彼と共に村を護る姿を想像する。胸が熱くなった。同時に痺れも走ったが、それには気付かないふりをする。

「おっしゃる通りです。因みに王都を守護しているのは我が兄セオドアです。どうぞお見知りおきを」

「せっ、セセセセオドア様!? 歴代最年少、14歳で王都大司教に就任されたあの……っ、あのかくも()()()()()()()セオドア様の妹君……っ」

(麗しくも荘厳な……)

 エレノアは鼻を(すす)るフリをして笑いを堪えた。小さく咳払いをして村民達に向き直る。

「村の玄関口である門から領主邸にかけて、それから前線と森の間に結界を張りました。この場の安全は確保され、前線の勇士達も優位に戦いを進められるようになったはずです。もうしばらくの辛抱。共に励みましょう」

「はい!」

「ありがとうございます! 聖女様!」

 村民達の士気がぐっと高まった。エレノアは再び鼻を啜る。今度は膨らみかけた鼻孔を隠すために。
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