余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「さぁ、ミラ。わたくし達も参りましょう」

「よっしゃー!! 気張りますよー!!!」

 エレノアとミラは患者のもとに向かった。その背後でリンクが呼び止められる。その相手はペンバートン家の老齢の家令だった。

「オスカー様を見ていないか?」

「ごめんなさい。僕、今村に戻って来たところなんです」

「領主様か? 俺はずっとここにいるが見てねえな。流石に前線には行かれていないとは思うが……」

「そうか……」

(伯爵が行方不明に……?)

 民思いの彼のことだ、自ら率先してサポートに回っているのかもしれない。だが、それにしても家令に何も言わずに単独で行動することなどあり得るのだろうか。

 疑問と不安を抱きつつもエレノアは頭を切り替えた。一人また一人と治療をしていく。滞りなくとてもスムーズだ。それを可能にしたのはレイのアシストによるところも大きい。

 レイはエレノア達が村に戻るまでの僅か30分の間に、負傷者全員の応急処置を済ませ、メモに容体・懸念事項をまとめ上げていたのだ。

(専門外なのに。ふふっ、やはりどうにも妬けてしまうわね)

 広場にはレイの姿はなかった。村民の話では休む間もなく前線に向かったのだと言う。やれやれと首を左右に振って22人目の患者に触れる。

「ぐっ、はぁ……ぁ……っ!」

「お気を確かに。大丈夫、直ぐに良くなりますよ」

 緑色の魔法陣を展開させて治療を進める。男性の息遣いが荒いものから穏やかなものへ。花が(ほころ)ぶように表情も和らいでいく。

(良かった……)

 快方に向かうその姿を見る度に心底安堵する。かけがえのない命を、未来を守ることが出来たのだと。

 自己満足以外の何ものでもないが、この気持ちが湧き上がる度エレノアは思うのだ。癒し手として一人でも多くの人を救いたい。この命尽きる日まで、と。

「聖女様! こちらもお願いします!」

「はい! ただいま――っ!?」

 一人の怪我人が担架で運ばれてくる。見覚えのあるその紅髪に、エレノアは堪らず息を呑んだ。
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