余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
運ばれてきたのはユーリの父親だった。心臓が早鐘を打つ。何故? どうして? 疑問が浮かんでは消えていく。
(考えるのは後。まずは治療よ)
無理矢理に頭を切り替えて治療を開始する。こちらもまた切り傷。右肩から左腰にかけて赤黒い線が刻まれていた。
(バトルマンティス……カマキリ型の魔物の仕業ね)
国の精鋭が相手にするような魔物に遭遇、あろうことか危害を加えられたのだ。その恐怖と絶望は計り知れない。
(お体だけでなく、心も癒して差し上げられたらいいのに)
漠然とした願いを胸に抱きながら魔方陣を消した。フキンで彼の体を拭きつつ、処置漏れがないか確認をしていく。
(作業中あるいは避難の途上で遭遇してしまったのかしら?)
どうにもスッキリしない。むしろ胸騒ぎがする。過るのはユーリの姿。そしてそんな彼を担ぎ帰る父親の姿だ。
(まさか……ユーリを止めに……?)
だとしたら、あまりにも不憫だ。血を拭う手から力が抜けていく。
「ゆっ、り……、ユーリ……っ」
何度となく息子の名を口にする。酷く掠れた弱弱しい声で。瞼は未だ下ろされたまま。言わずもがなこれは譫言だ。
(ユーリ、貴方は愛されているのね)
真意を測りかねていた。夢に対する頑ななまでの否定。それが息子を思ってのことなのか、それとも世間体を気にしてのことなのかと。
少なくとも父親は恐れていたのだろう。こういった事態に、ユーリが危険に晒されることを。その夢を否定することで必死に息子を守ろうとしていたのだ。
「何ってこと……」
互いにとっていい思い出になれば。そんな軽はずみな気持ちでしていい返事ではなかったのだ。
「……っ、申し訳ございません」
どちらの選択が正しいのか。どちらの幸福を取るべきなのか。いくら考えたところで答えは出ない。おそらくはどちらも譲れない。どこかで折り合いを付ける必要があるだろう。
(そのためにもどうか、どうかユーリをお守りください)
仕上げを終えたエレノアは両手を組んで静かに祈りを捧げた。
「……えっ? ……げッ!? うっ嘘でしょ!? もう終わったんですか!!??」
背後のミラが慌てふためく。いつもと変わらぬ彼女の姿に勝手ながら救われた心地になる。
(考えるのは後。まずは治療よ)
無理矢理に頭を切り替えて治療を開始する。こちらもまた切り傷。右肩から左腰にかけて赤黒い線が刻まれていた。
(バトルマンティス……カマキリ型の魔物の仕業ね)
国の精鋭が相手にするような魔物に遭遇、あろうことか危害を加えられたのだ。その恐怖と絶望は計り知れない。
(お体だけでなく、心も癒して差し上げられたらいいのに)
漠然とした願いを胸に抱きながら魔方陣を消した。フキンで彼の体を拭きつつ、処置漏れがないか確認をしていく。
(作業中あるいは避難の途上で遭遇してしまったのかしら?)
どうにもスッキリしない。むしろ胸騒ぎがする。過るのはユーリの姿。そしてそんな彼を担ぎ帰る父親の姿だ。
(まさか……ユーリを止めに……?)
だとしたら、あまりにも不憫だ。血を拭う手から力が抜けていく。
「ゆっ、り……、ユーリ……っ」
何度となく息子の名を口にする。酷く掠れた弱弱しい声で。瞼は未だ下ろされたまま。言わずもがなこれは譫言だ。
(ユーリ、貴方は愛されているのね)
真意を測りかねていた。夢に対する頑ななまでの否定。それが息子を思ってのことなのか、それとも世間体を気にしてのことなのかと。
少なくとも父親は恐れていたのだろう。こういった事態に、ユーリが危険に晒されることを。その夢を否定することで必死に息子を守ろうとしていたのだ。
「何ってこと……」
互いにとっていい思い出になれば。そんな軽はずみな気持ちでしていい返事ではなかったのだ。
「……っ、申し訳ございません」
どちらの選択が正しいのか。どちらの幸福を取るべきなのか。いくら考えたところで答えは出ない。おそらくはどちらも譲れない。どこかで折り合いを付ける必要があるだろう。
(そのためにもどうか、どうかユーリをお守りください)
仕上げを終えたエレノアは両手を組んで静かに祈りを捧げた。
「……えっ? ……げッ!? うっ嘘でしょ!? もう終わったんですか!!??」
背後のミラが慌てふためく。いつもと変わらぬ彼女の姿に勝手ながら救われた心地になる。