余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ビル! ああ……よくぞご無事で」

 腕や胸の辺りに血が付いているが、見たところ彼のものではなさそうだ。ベージュ色のチュニックは僅かも破れていない。

「ユーリが大怪我を! バトルマンティスに腕を斬られました」

「っ! まさか欠損して……っ」

 紛失、あるいは壊死している場合、エレノアの『祈り』を(もっ)てしても治すことは出来ない。干渉出来るのはあくまで人間の治癒能力が及ぶ範囲内。失った腕を生み出すことは出来ないのだ。

「切断には至っていません。ただ傷は深いです」

「そう……」

「ゼフは今、別の重傷者の対応に追われていて手が離せません。可能であればご同行願いたいのですが」

「まだ戦闘は続いているの?」

「はい。ですが、強敵はもういません。余程のことでもない限り重傷者が出ることはないかと」

 エレノアは深く頷いて改めて周囲を見回した。未治療者はミラが対応している団員のみ。峠は既に越えている。エレノアが外れても問題はないだろう。

「承知しました。ミラ、任せてもいいわね?」

「はい! この人は勿論、運ばれてきた患者さんも全員アタシが治します!」

 ミラの心意気を認めた二人は、微笑まし気に表情を和らげた。

「わっ……」

「?」

 ミラの頬がぽっと赤らむ。目線はエレノアの方を向いているようでいて向いていない。何気なく彼女の視線を追うとそこには――ビルの姿があった。
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