余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
(あらあら……)

 ミラとビルが知り合ったのは一週間ほど前。会話こそ重ねているものの、ミラは基本同性であるエレノアか指導役であるゼフの傍に。ミラとビルが二人きりでいるところはあまり見たことがなかった。

(仕方ないわよね。彼はデンスター屈指の美男。魅かれるのも無理はないわ)

 チョコレートブランのやわらかな髪に、目尻が垂れ下がった萌黄色の瞳、筋が通った品のある小鼻。そして、慎ましくも何処か目を惹くふっくらとした唇。清涼感に富みながらも甘く(とろ)けるような色気を感じさせる。ビルはそんな青年だった。

 エレノアからすれば頼もしい同志以外の何者でもないが、女性として魅かれる気持ちも分からないでもなかった。

(お茶目で人懐っこいところもあるのよね。弟力、後輩力と言えばいいのかしら? そういったところにも魅かれたのかもしれないわね。……あら?)

 ビルは目を伏せていた。その表情は苦し気でもあり切なげで。

「……事態は急を要します。不躾ながら(はやて)でお運びしてもよろしいでしょうか?」

「えっ、ええ……あっ、ちょっと待って頂戴」

 エレノアは手にしていたハンカチをミラの膝の上に置いた。

「慌てちゃダメよ。落ち着いて、慎重に処置をして差し上げて」

「はい!」

 ミラの瞳が一層眩しく光る。エレノアはそっと彼女の肩に触れて、再びビルに目を向けた。

「お願いするわ」

「はい。失礼致します」

 ビルはエレノアを抱き上げた。彼女の背と脹脛(ふくらはぎ)にビルの(たくま)しい腕が回る。
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