余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「右腕以外の個所は私の方で治しました。麻酔も変わらず効いているようです」

「流石ね。広場に続き見事な手際です」

「ご覧の通り腕は辛うじて繋がっていますが、神経に甚大なダメージを負っています」

 場合によっては腕に障碍が残る。ユーリの将来すら左右する重大な局面ではあるが、エレノアが不安に揺れることはなかった。瑠璃(るり)色の瞳は静かにそれでいて力強く燃えている。

「心得ました」

 レイの口角が持ち上がる。その表情は心なしか誇らしげだ。

「きっ、騎士様! あのっ……主人を見かけませんでしたか? このバカを追って出て行ったっきり戻ってこなくって」

(やはり、お父様はユーリを追って……)

「大丈夫ですよ。一時負傷されましたが、今は治療も済んで広場でお休みになられています」

「あっ、あ゛あ……っ!!」

 ユーリの母は膝を折って泣き崩れた。ビルはそんな彼女の肩にそっと触れる。

(両者がきちんと話し合えるようにしなくては。そのためにも一刻も早くこの腕を――)

「せっ、聖女様! どうか息子も! ユーリもお助けください……っ」

 彼女は床にしゃがみ込んだままエレノアに祈りを捧げた。組まれたその両手は小刻みに震えている。

(ユーリ、貴方はお母様からも愛されているのね。そして貴方自身もご両親を、村を愛している)

 ユーリは両親を、村を守るために命がけで戦ったのだ。その事実をしっかりと胸に抱いて言葉を紡ぐ。

「お任せください。必ずやお救い致します」

「~~っ、ありがとうございます! ありがとうございます……っ」

 エレノアは眠るユーリへと目を向ける。彼の(まぶた)にかかった紅髪をさらりと払って小さく息をついた。

「ユーリ、共に励みましょう」

 エレノアは霧がかかった虹色の魔方陣を展開させた。これこそが『祈り』、聖者/聖女のみが扱える治癒魔法だ。神々しくもやわらかな光がユーリの体を包み込んでいく。

「なっ……!」

「きゃっ!!? ユーリ!!!?」

 突如ユーリの体が輝き出した。エレノア同様虹色に。けれどその光は彼女のものよりも鋭利で力強い。

「こっ、これは……!」

「勇者の、光……」

 選択肢は一つに。ユーリの運命は決してしまった。両親の願いはもう叶わない。
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