余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「すっげぇー!!!」

 エレノアが口を閉ざしている間に、ユーリが勢いよく駆け出した。向かう先にはビルがいる。ビルや他の大人達が戸惑うのを他所に、ユーリはビルの周囲をくるくると回り出した。

 興奮が冷めやらないのか、サーベルを見せてほしいなどとお強請(ねだ)りをし始める。ビルもこれには笑顔だ。堪らずといった具合にユーリの頭を撫でる。

 一方で賢者であるレイは完全無視だ。「クソガキが……」とレイが低く(うな)ったのをエレノアは聞き逃さなかった。

 内心で苦笑しつつユーリの母に目を向ける。彼女はまだ事態を呑み込めていないようだ。無表情に近い表情で顔を俯かせている。酷なことをしている。その事実を胸に話しを続ける。

「……しかしながら、今の二人は無免許の状態。ライセンスを剥奪された状態にあるのです」

「えっ!? どうして???」

「血筋由来の逸材とそれに関連した人々……所謂『国の権力者』達が、()()()()()()()が台頭することを快く思っていない。もっと言うと自身の立場が揺らぐことを、何よりも恐れているからです」

 そういった保守派の人々は自身らとその他をこう区別した。

 血筋由来の逸材を『λ(ラムダ)

 突然変異によって誕生した逸材を『μ(ミュー)』と。

「レイ、ビル。お話してもよろしいかしら?」

 レイは煩わし気に、ビルは気まずそうに頷いて応えた。了承を得たエレノアは(おもむろ)に語り出す。
< 45 / 80 >

この作品をシェア

pagetop