余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「気持ちは分かる。だが……もうダメだ。腹を括ろう」
バリーはエレノア一行に目を向けた。その表情にはまだ迷いがある。ユーリと共に過ごす平穏無事な未来。その未来を未だ諦めきれずにいるのだろう。
「……言い訳がましいようですが、私達夫婦もユーリの覚悟を認めていたんです。逃避でも何でもなく本物であると。ただ、その最後の一歩を踏み出せずにいた。本当にお恥ずかしい話です」
エレノアは否定の声を呑み込んだ。軽はずみな気持ちで返してはいけない。同じ失敗を繰り返してはいけないと、そう自身を戒めて。
「実は私の父も、妻の弟も戦士だったのです。それぞれの戦場で懸命に戦い、そして散りました。しかしながら、その死に様はあまりにも惨たらしく……」
バリーは言葉を詰まらせた。当時のことを思い出しているのだろう。
一体どんな思いでユーリを見ていたのだろう。どんな思いでユーリを捜しに出たのだろう。想像するだに胸が痛んだ。
「人は皆『名誉ある死』だと。悲しむのではなく誇れと言います。そうしなければ前に進めなくなるから。止むを得ない選択だということは重々承知しています。けれど、……だからと言ってそう易々と許容出来るものではない」
レイとビルが固く目を閉じた。経験があるからだ。レイは師を、ビルは親友を目の前で失っている。にもかかわらず、俯く暇すら与えられなかった。彼らの死を誇りに前進することをただひたすらに求められたのだ。
「受け入れられるはずがありません。愛していたのですから。名誉も、金もいらない。ただ共に在りたいとそう……願って――」
「なーんだ。そんなことか」
場に不釣り合いな明るくも軽やかな声。発したのはユーリだ。皆の意識が一斉に彼に向く。
「ようは生きて帰ってくればいいんだな?」
無言も肯定も出来ない。ただ見つめることしか出来なかった。虹色に輝く彼は酷く眩しい。けれど、不思議と目が離せなくて。
「ははっ! 大丈夫だよ。オレ、ぜってー死なないから」
ユーリは溌剌とした笑顔で宣言した。根拠も何もあったものではない。だが、不思議と彼ならば叶うのではないかとそんな気にさせてくれる。
「そん時はエレノアも一緒だ。なんたってオレの未来のお嫁さんなんだからな!」
途端に空気が和らぐ。皆の口元から笑みが零れた。
(……あたたかい。それでいてとても眩しい。だからこそ選ばれた。選ばれてしまったのね)
「お守りします」
不意に誰かが切り出した。ビルだ。彼はサーベルの切っ先を床に向けて片膝をついた。
バリーはエレノア一行に目を向けた。その表情にはまだ迷いがある。ユーリと共に過ごす平穏無事な未来。その未来を未だ諦めきれずにいるのだろう。
「……言い訳がましいようですが、私達夫婦もユーリの覚悟を認めていたんです。逃避でも何でもなく本物であると。ただ、その最後の一歩を踏み出せずにいた。本当にお恥ずかしい話です」
エレノアは否定の声を呑み込んだ。軽はずみな気持ちで返してはいけない。同じ失敗を繰り返してはいけないと、そう自身を戒めて。
「実は私の父も、妻の弟も戦士だったのです。それぞれの戦場で懸命に戦い、そして散りました。しかしながら、その死に様はあまりにも惨たらしく……」
バリーは言葉を詰まらせた。当時のことを思い出しているのだろう。
一体どんな思いでユーリを見ていたのだろう。どんな思いでユーリを捜しに出たのだろう。想像するだに胸が痛んだ。
「人は皆『名誉ある死』だと。悲しむのではなく誇れと言います。そうしなければ前に進めなくなるから。止むを得ない選択だということは重々承知しています。けれど、……だからと言ってそう易々と許容出来るものではない」
レイとビルが固く目を閉じた。経験があるからだ。レイは師を、ビルは親友を目の前で失っている。にもかかわらず、俯く暇すら与えられなかった。彼らの死を誇りに前進することをただひたすらに求められたのだ。
「受け入れられるはずがありません。愛していたのですから。名誉も、金もいらない。ただ共に在りたいとそう……願って――」
「なーんだ。そんなことか」
場に不釣り合いな明るくも軽やかな声。発したのはユーリだ。皆の意識が一斉に彼に向く。
「ようは生きて帰ってくればいいんだな?」
無言も肯定も出来ない。ただ見つめることしか出来なかった。虹色に輝く彼は酷く眩しい。けれど、不思議と目が離せなくて。
「ははっ! 大丈夫だよ。オレ、ぜってー死なないから」
ユーリは溌剌とした笑顔で宣言した。根拠も何もあったものではない。だが、不思議と彼ならば叶うのではないかとそんな気にさせてくれる。
「そん時はエレノアも一緒だ。なんたってオレの未来のお嫁さんなんだからな!」
途端に空気が和らぐ。皆の口元から笑みが零れた。
(……あたたかい。それでいてとても眩しい。だからこそ選ばれた。選ばれてしまったのね)
「お守りします」
不意に誰かが切り出した。ビルだ。彼はサーベルの切っ先を床に向けて片膝をついた。