余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「患者様は?」

「治しました! もうすっかり元気です」

「そう! 素晴らしいわ。よく頑張りましたね、ミラ」

「えへへ~っ♪」

 ミラは(くすぐ)ったそうに笑った。その直後に顔を勢いよく上げる。

「お借りしたハンカチは、きちんと洗って返すので!」

「気にしなくていいのよ」

「めっちゃ励まされたんで、ちゃんと返したいんです!」

 両手に小さな握り拳を作って見上げてくる。いじらしい。エレノアは頬を(ほころ)ばせて何度となく頷く。

「ありがとう。じゃあ、お願いするわね」

「はいっ! お任せください!」

「聖女様、よろしいでしょうか?」

 隊長のロナルドが遠慮がちに声をかけてきた。エレノアは笑顔で先を促す。

「伯爵にご相談をしたところ、もう一泊させていただけることになりまして」

「まぁ! 良かったわ。ご無事だったのね」

「と、おっしゃいますと?」

「家令が探していたのです。伯爵のお姿が見えないと」

「なるほど。私が見る限りお変わりなかったように思います。大方、皆のために人知れず汗を流していらっしゃったのでしょう」

「ふふっ、そうね。ご立派だけれど、何ともまあ家令泣かせなことね」

「ははっ、まったくです」

「では、ご厚意に甘えてお屋敷に向かうとしましょうか」

 エレノアの呼びかけを受けて皆が歩き出す。

 空も、地面も、木々も赤く染まる夕暮れ時。甲冑が奏でる控えめな金属音、地を踏む足音が何とも心地いい。

 エレノアの隣にはミラ。前方には隊長の他5名の騎士。背後にはレイとビル、ゼフの他3名の騎士が並んでいた。

「っ!」

 不意に緑色のオーラがエレノア、レイ、ビルを包み込んだ。ゼフだ。魔法を展開させて3人の体力、魔力の回復作業に取りかかっていく。
< 52 / 80 >

この作品をシェア

pagetop