余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「次の目的地の領主様は……フォーサイス様でしたっけ? どんな人なんですか?」

「なっ!!??」

 隊長が高速で振り返った。その顔はすっかり青()めていて。

「ミラ! このっ、~~っ、物を知らないにも程があるぞ……!」

「はえ?」

 嘆く隊長を他所に、ミラはいたってマイペースだ。年齢差も相まってか実の親子のように映る。エレノアは心を和ませつつ説明を始めた。

「フォーサイスは三大勇者一族の一つです」

「えっ!? ってことは、(ワル)ってこと……ですか!?」

「ふふっ、違うわ。ご当主のハーヴィー様はまさに『勇者の中の勇者』。猛き武人でありながら、お仲間に対する敬意も決して欠かすことがない。レイとビルが認める程のお方なのよ」

 「ね?」と2人に同意を求めると、直ぐに頷き返してきた。しかしながら、その眼差しは穏やかでありながらも、何処か(わび)し気でもあって。

「ビル、一つ頼めるか」

 隊長が(おもむろ)に切り出した。ビルは直ぐに切り替えて、馴染みの柔和な笑顔で応える。

「はい。何でしょう?」

「王都に行って今回の件を報告してきてほしいんだ」

 途端にビルの表情が曇った。不満というよりは不安顔だ。

「お言葉ですが、今は護衛に専念すべきでは?」

 ビルの主張も、隊長の主張も(もっと)もだ。何せ、脅威ランクAレベルの魔物――国の精鋭が相手にするような魔物が、生息地を越えて何の前触れもなく出現したのだ。まさに異常事態と言える。

 エレノア自身も正直なところ判断しかねていた。護衛対象にはエレノアだけではなく、未来の勇者・ユーリも含まれているからだ。

 彼の両親のことを思えば、益々以(ますますもっ)て慎重に判断しなければならない。

「ウィリアム殿」

 レイだ。高圧的に。それでいて力強く呼びかける。
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