余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
『あの日、僕は選択を誤りました』

 数か月前、当時引く手数多であったビルは三つの勇者パーティを掛け持ちしていた。

 その日はハーヴィーに同行する予定になっていたが、クリストフを始めとした有力者達が権力を笠に同行するよう強要してきたのだ。

 日和見主義なビルの父は二つ返事に了承。ビルは気乗りしなかったが、ハーヴィーと親友であるアーサーから背中を押されたことで渋々了承。クリストフ達と共に古代樹の森の中を進んだ。

 順調に見えた歩みは二体の黒龍によって瓦解。ビルは仲間達と共に一体目の黒龍を討伐。その足でハーヴィー達のもとに駆け付けるが――その時には既にアーサーは致命傷を負い、ハーヴィーは右腕と左脚を失っていた。つまりは、取り返しのつかない事態に陥っていたのだ。

『返……せ…………………返せ!!!!』

 ()()()()()()()()ビルは単騎でSSの黒龍を討伐。ハーヴィーやその他メンバーの生還には成功するも、親友・アーサーだけは救うことが出来ず、ただ静かに看取ることしか出来なかった。

 以来ずっと彼は後悔に暮れているのだ。即決出来るはずもない。

「かしこまりました」

「っ! ビル……」

 ビルは悩み抜いた末に了承した。最終的に()()()()()()()()()『仲間を信じる道』を取ったようだ。

「ありがとう。とても嬉しいわ」

「いえ」

 ビルは微苦笑を浮かべつつ控えめに会釈した。まだ迷いがあるようだ。彼の背を押す言葉を送りたい。だが、不甲斐ないことに何も思い浮かばなかった。

「あ゛~、くそっ!」

 そんな中で口火を切ったのは、先程までビルと親し気に会話をしていたあのゼフだった。
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