余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「あ゛? 見習いは引っ込んでろや」

 ゼフのこめかみに青筋が立った。その目には殺意が滲んでいる。

 予想の上をいくゼフの反応に、ミラだけでなく他の一行も瞠目。当のビルはといえば――見て見ぬフリだ。黙々と装備や体の具合を確かめている。

「はぁッ!!?? 見習いこそ経験を積むべきなんじゃないですかね~?」

()でやれ。これは師匠命令だ」

「意味分かんない!!!」

 ミラとゼフが(いが)み合う。互いに一歩も譲らない。エレノアもこれにはお手上げだ。微笑みを浮かべて見守ることしか出来ない。

「それでは、行って参ります」

 ビルは変わらずマイペースだ。いや、もしかすると離れることで事態の収束をはかろうとしているのかもしれない。

「ええ。どうぞお気をつけて」

 ビルは会釈をした後に、白い霧がかったオーラを纏った。

「っ!」

 瞬きする間に彼の姿を見失う。あとには足跡が一つ残るのみだ。

「ビル、愛してるぜ~」

 ゼフが投げキッス一つに見送る。その直後、堪り兼ねた様子のミラが吠えた。

「ゼフさん!!! 邪魔しないでくださ――」

()()()()に色目を使うのは止せ」

「えっ……?」

 ゼフは一層高圧的に、それでいて冷たい声音で言い放った。
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