余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ミラ!!! ――ぐあ゛っ!?」

「ロナルド!?」

 隊長が吹き飛ばされた。樹木に背中を打ち付けて――動かなくなる。

「たっ、隊長……」

 残る戦闘員はミラだけだ。エレノアには戦う術がない。

「あっ……」

 ミラの手から剣が滑り落ちる。慌てて拾いにかかる――が、膝をついたまま動けなくなってしまう。

雁字搦(がんじがら)めだな。治癒術士の卵よ。()()()()()()()()()()。戦えば敬愛する師を危険に(さら)すことになる」

「…………っ」

 ミラは否定しなかった。図星なのだろう。彼女には仲間に見捨てられた過去がある。

 護衛として正しい選択であると分かっていても、仲間を置いて逃げるという選択それ自体が彼女にとって禁じ手であるのだろう。

「ぐおぉおぉぉぉおぉ!!!??」

「っ!?」

 突如、天から光が降り注いだ。雷だ。巨大な柱のような落雷が地を、魔物の生命を(えぐ)っていく。

 轟く雷鳴、眩さにエレノアは堪らず目と耳を塞いだ。

(エルヴェ叔父様。御覧になっていますか? 貴方様が命がけで繋いでくださった未来への希望が、今こうしてわたく達をお救いくださいました)

 エレノアは胸を熱くしながらレイに目を向けた。

「っは、ざまぁ……みやが……れ……」

 レイはうつ伏せに倒れ込んだまま魔法を放ったようだ。彼の周囲には魔術師特有の青い魔力の残滓が漂っている。

「やった……! やりましたよ! エレノア様!!」

「ええ、そうね」

「さっすがレイさんです!!! よっ! 大賢者サマッ!!」

 ミラは勢いよく立ち上がり、一人勝(どき)を上げる。レイは無反応だ。どうやら気絶しているらしい。

 エレノアは傷付いた勇士達の治療に着手しつつ周囲を見回した。魔物がいた付近には直径・深さ共に10メートルほどの大穴が開いている。

(やはり伯爵もご一緒に……。せめてご遺体だけでも――っ!?)

「くっくっくっく……いいぞ。いい……実にいい……想像以上だ。しかし、今一歩足らん。あの男、大賢者エルヴェ・ロベールを超えるのには」

(まさか……生きて……?)

 エレノアは震える唇に力を込めて振り返る。
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