余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ゲホっ、ゲホ……っ」

『ミラっ!?』

 ミラは生きていた。あの時同様、自身に治癒魔法をかけて生き延びたのだろう。

「エレノア、さま……っ、みん、な……」

 ミラは瓦礫の山から這い出ると忙しなく周囲を見回した。こちらには気付いていないようだ。

「っ!? ユーリ!!」

 ユーリに気付いたようだ。傷付いた左脚を引きずりながらユーリの元に向かう。彼女の足跡が血で赤く染められていく。

「ユーリっ、しっかりして」

 ミラはユーリの治療を始めた。しかしながら、緑色の魔法陣は消えかかっている。もうほとんど魔力が残っていないのだろう。

『いけません! それ以上魔法を使っては』

 魂を()べることになる。

 これは取り返しのつかない行為だ。修復出来ないから。癒しの力が及ぶのは肉体まで。魂そのものに干渉することは出来ないのだ。

『ユーリの命は十分に維持出来ています! 焦って治す必要は……っ』

 ミラは治療を止めない。何事か呟いているが、距離があるせいで上手く聞き取れない。

『~~っ、お止めなさい!! ミラ!!!』

「来たか」

『えっ……?』

 人影だ。凄まじい勢いでこちらに向かってくる。ビルだ。皆を、エレノアを呼ぶ声が大きくなっていく。

「さて、大聖女よ。共に『修羅(しゅら)』の誕生を祝そうではないか」

『修羅……?』

 エレノアは知らない。それが如何(いか)なる存在であるかを。

 悪魔はエレノアが入った黒水晶をペンダントに。首から下げると、手から別の水晶を出現させた。目を凝らせばその中には――紫色の靄に包まれたゼフの姿があった。
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