余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「っ!? ゼフ!?」

 不意にゼフの姿が現れた。ビルはサーベルを捨ててゼフを受け止める。

「ゼフ! ゼフ!!」

 ビルは膝をついた。自身の腕にゼフを寝かせたまま必死になって呼びかける。

「しっかりするんだ!」

 ゼフの目は固く閉じられたままだ。

「ゼフさん!」

 ミラが左脚を引きずりながら駆け寄る。直ぐさま治癒魔法をかけようとした。けれど――。

「っ! ……っ」

 躊躇してしまった。力を惜しんでのことではない。察してしまったからだ。もう既に彼が、ゼフが手遅れであることを。

「ミラ? どうしたの?」

「……っ、…………ごめ、……なさい」

「えっ?」

「アタシがもっと強かったら。~~っ、アタシがもっとちゃんとしてたら――」

「悪いけど反省は後だ。今は治療を――」

「……サー……」

「っ! ゼフ!」

 ゼフの目が開いた。しかしながら、その薄茶色の瞳はビルを捉えていない。ただひたすらに暗くなり始めた空を見上げている。

「アーサー様、ご無沙汰……しております」

「えっ……?」

()()()()なら裏山の修練場に、……よろしければ……手合わせを……」

 物言いから察するに彼の言うアーサーとは、ビルの亡き親友アーサー・フォーサイスを指しているのだろう。

「いっ、意識が混濁しているんです! これはその、()()()()()()()()で――」

 ミラが慌ててフォローを入れる。場合によってはゼフの本心が。これまでひた隠しにしてきた()()が露呈してしまうと――そう思ったのだろう。

 対してビルは何も返さない。ぼんやりとした表情でゼフの薄茶色の瞳を見つめている。

「不躾ながら私も、ご一緒させて……いただけ、ませんでしょうか? ……私事です、が……治癒術師の才があることが……分かり、まして……。……剣の修練も……。坊ちゃんは、……剣聖、…………で、……従者、という……理由……だけでは、お傍に……いる、ことが……叶わず……」

「~~っ、聞かないであげて――」

 ビルは首を左右に振って拒否した。そんな彼の顎は小さく震えていて。

「……はい。叶うことなら一生涯……お仕えをしたく。なので、そのためにも、……坊ちゃんや旦那様だけ……ではなく、……他の方々にも……お認め、いただけるだけの……者に……ならなく……ては――」

「ゼフ」

 ビルは今一度呼びかけた。静かに。祈るように。
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