余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「ぼっ、っちゃん……?」

 諦めかけたその時、薄茶色の目がビルを捉えた。ビルは微笑みを(たた)えて応える。

「ゼフ。君は僕の右腕。最も信頼する部下だ。そんな君を僕は誇らしく思うよ。これからも共に……っ、叶うことなら生涯を賭けて僕を支えてほしい」

 途端にゼフの表情が綻んだ。多幸感に満ち満ちた表情で深く頷く。

「はい。お望みとあらばいつまでも」

 ゼフは右手を胸に当てて礼をする。

「……ウィリアム様」

「……何?」

「ありがとう……ございます」

「……っ」

 直後、ゼフの右手が滑り落ちる。ビルはその手を掴んで――顔を俯かせた。広い肩が震えている。小刻みに。力なく。

「逝ったか」

「……………………」

「吾輩が憎いか? 大剣聖ウィリアム・キャボットよ」

「……………………」

 ビルは何も答えない。無言のままゼフの(まぶた)を閉ざして両手を組ませる。

「……………………」

 ビルは立ち上がった。彼が纏うオーラ――白い霧がかったオーラが薄っすらと赤みを帯びていく。

『まさか――』

「お前を殺す――」

「諦めるな!!!!!!!!!!!!!!」

 突如、何の前触れもなくミラが叫んだ。ビルだけでなく悪魔までもが目を見開く。

「ゼフさんから伝えてくれって……そう言われたんです。アタシには何のことだかサッパリ分かりません。でも、ビルさんなら分かるんでしょ?」

 ミラの濃緑の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。

「……っ」

 ビルは顔を俯かせた。オーラから赤が抜けていく。

「そうだな。まだ希望はあるか」

 悪魔の目がユーリに向く。

「んっ……」

 ユーリの手がぴくりと跳ねた。瞼も上がっていく。虚ろだった栗色の瞳が悪魔を捉えた。
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