余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
「っ!? てっ、テメエ!!! くっ!?」

 起き上がろうとしたようだが、叶わなかったようだ。どうやら腹のあたりが痛むようだ。両手で押さえ込んで苦し気に喘いでいる。

「ユーリ!」

 ミラとビルが駆け寄る。ビルはユーリを抱き起すとその口元に回復薬を寄せた。

「飲める?」

「ごめん。ありがとな、剣聖のにーちゃん」

 ユーリはビルに背中を支えられながら回復薬を飲んでいく。ビルはその間、何事か思案しているようだった。

「大剣聖よ、今一度選ぶが良い。信じることが出来るか? その勇者を。それに集いし仲間達を」

 ビルは答えない。答えられないと言った方がニュアンスとしては近いのかもしれない。

「はっ、はぁ……っ、エレノアを返せ!!!」

 ユーリは回復薬を飲み終えるなり勢いよく立ち上がった。ビルはその姿を酷く驚いたような顔で見つめる。

「威勢のいいことだ。良かろう。吾輩を倒したあかつきには大聖女を解放すると約束しよう」

「上等だ!!!」

(はや)るな。今の貴様らでは相手にならん」

「~~っ、やってみなきゃ分かんな――」

「貴様らの言う『古代樹の森』、その最深部には吾輩が住まう城がある」

「何……?」

 ビルが戸惑う。初耳なのだろう。それは裏を返せば、その城の存在すら認知出来ないほどに攻略が進んでいないことを意味している。

「吾輩はそこで待つ。腕を磨き、信頼に足る仲間を集めよ」

「っ! 待て――」

()()()()()。期待しているぞ、幼き勇者よ」

 悪魔が指を鳴らした。ユーリ、ビル、ミラ、ゼフの姿が消える。跡形もなく。(こつ)然と。
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