結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「九条さんは今、困っているんですよね? どうして僕を頼らないんですか?」

怒ったような真剣な声が頭の上でした。
顔を上げると寂しそうな瞳がこっちを見ている。

「だ、だって、先生には関係ないから」

喉の奥から絞り出すように言った。先生の瞳が失望の色に変わる。

「関係ない?」

怒りを含んだ声で聞かれた。

「関係ないですから」
「僕は君にプロポーズしているんですよ? 僕に黙って引っ越すなんて許せない」
「プロポーズはお断りしたはずです」
「諦めないと言ったでしょ」
「諦めて下さい。先生と結婚なんて無理です」
「どうしてそんなに頑ななんですか?」

それは先生が好きだから。なんて、死んでも言えない。

「先生の盾になりたくないんです。結婚するのは他の女性から言い寄られるのを防ぐ為でしょ?」
「それだけではありませんよ。僕は九条さんの盾になりたいんです」

私に言い聞かせるように先生は私の両頬を両手で挟みながら言った。
頬に先生の大きな手と温もりを感じて、鼓動が速くなる。

私の盾になりたいだなんて、私をその気にさせる為の作戦でしょ? 優しい事を言って、政略結婚から逃げる為に私を利用したいだけなんでしょ?

「早く僕に落ちて下さい」

熱のこもった瞳に見つめられる。熱い瞳で見つめられたら、私の事が好きだって勘違いしそうになる。先生に騙されてはダメよ。先生の目的は恋愛感情のない結婚なんだから。先生と結婚したら地獄が待っている。私が先生を好きだって知られたら関係が終わる。そんな結婚したくない。
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