愛し、愛され、放さない
過剰な束縛
「あ!玲蘭!
その服ダメだよ」

ある休日。
百合と玲蘭は、デートに出掛けようとしていた。

クローゼットの前で、更衣中の二人。
玲蘭が着替えた服を見て、百合が指摘していた。
「へ?」
「それ、首周り広いでしょ?
ダメ!」

「あ…うん…」
「えーと……
あ!これ!これにしな?」

「うん…」
(地味だよなぁ…これ…
久しぶりのデートだし、お洒落したかったなぁ〜)
そう思うが、反論なんかできない。
ゆっくり頷く。

「その服は、僕と二人の時だけ!」
そう言われ、百合の選んだ服に着替えさせられた。

「今日玲蘭に似合う服、沢山買ってあげるからね!」
玲蘭の思っていることを察したように、百合が微笑み言ったのだった。


家を出て、エレベーターに乗り込む。
久しぶりのデートに、玲蘭は心が弾んでいた。

「これから暑くなるから、嫌だね…」
ポツリと言った、百合。

「え?
あー、毎年暑いもんね…(笑)」
玲蘭も苦笑いをすると、百合が「そうじゃなくて!」と首を横に振る。

「え?」

「夏になると、どうしても玲蘭の露出が増えるでしょ?
僕以外の人間が、玲蘭の肌を見るなんて考えただけで虫酸が走る」

「………そ、そう……?」

「秋・冬はいいなぁ。
玲蘭に沢山服を着せて、隠すことが出来るから!」

「………う、うん…」
百合のことを少しひき気味見ながら、頷いた玲蘭。
繋いだ手が、痛いくらいに強く感じられた。


そして――――車に乗り込みハンドルを握る百合が、片方の手で玲蘭の手を握っている。

「あ、あの!百合くん」

「ん?」

「手…危ないよ?」

「大丈夫だよ!
いつもこうやって運転してるでしょ?
事故起こしたことないよ?」

「そうだけど……」

何度も言うように、百合は決して玲蘭から離れない。
出来る限り、玲蘭と繋がっていようとする。

運転中であっても、離れないのだ。


少し足を延ばして、隣町まで向かった二人。
去年、大きなショッピングモールができたからだ。

「凄いね……!」
「そうだね、時期をずらしたつもりだけど多いね…客」

「駐車場、停めれるかな?」
第一、第二駐車場まで満車で、第三駐車場まで向かうことになった。

やっと停めれる場所を見つけ、駐車する。
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