愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「……で。
これが似合って好みにあっちゃうんだよね」

以前の私なら絶対に選ばなかったラインだが、着てみると案外似合って気に入っていた。
服にあわせて最近、メイクや髪型を変えたのもあるかもしれない。
ただ、プライス非表示なのが大変怖いが……そこは気にしない方向で。
そうでないとここではやっていけないのだ。

「どう、ですか……?」

そろりと反応をうかがうように試着室を出る。

「……可愛い」

ぼそりと呟き、宣利さんは眼鏡から下を手で覆って目を逸らした。

「よし、それを買おう。
次はこれだ」

「はい……?」

戸惑いつつ差し出された服を受け取る。
着替えの服は一枚でいいんじゃないんですかね……?
などという私の疑問をよそに結局、服を五セットほどとそれにあわせて靴やバッグまでお買い上げになった。

準備をするあいだ、応接ソファーに座って待たせてもらう。
支払いはカードどころかサインだけで済んだ。
もしかしてこれが噂でしか知らない、売り掛けというものなんだろうか。
お金持ちの世界は知らないことが多すぎる。

「すまない、疲れただろ」

車に戻ってきて、宣利さんが詫びてくれる。

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