愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「は、はい。
すぐにご準備させていただきます」

「花琳」

キッチンへ急いで駆けていこうとする私を宣利さんが止める。

「いいよ、僕がやる」

「で、でも」

すっかり動揺し、彼の顔をすらまともに見られない。
そんな私の背中を彼は、優しくぽんぽんと叩いた。

「じゃあ、一緒にやろうか」

じっと私を見つめる、レンズの向こうの瞳は、大丈夫だと語っている。
それでようやく、うんと頷けた。

「お茶くらい、ひとりで淹れられるでしょーぅ?」

不快に典子さんの語尾が上がっていく。
それだけでびくびくと子うさぎのように怯えた。

「この家の主は僕だ。
文句があるなら出ていけ」

びしっと宣利さんの指が玄関を指す。
その声は静かだったが、激しい怒りを孕んでいた。

「べ、別にないわよ」

それを察知したのか典子さんがおとなしくなり、バッグから出した携帯を見だす。

「行こう、花琳」

そんな彼女を無視するように、宣利さんは私の背中を押して促した。

キッチンまで来てようやく、息をつく。

「やっぱりさ。
カウンセリングはもうしばらく受けたほうがいいと思うんだ」

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