愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
子供に言い含めるように優しく、彼が繰り返す。

「……そう、ですね」

そうすればこの、私の心を締めつける縄は切れるんだろうか。
切れるのなら切ってしまって自由になりたい。

「うん。
じゃあ、手配しておくよ。
今日はもう部屋に帰って……」

「大丈夫、なので」

宣利さんに全部言わせず、彼を見上げる。

「大丈夫なので、いさせてください」

じっと彼の目を見つめ、お願いする。
きっと典子さんが来た用事は、私絡みだ。
だったら、当事者である私のいないところで勝手に話をされるのは嫌だ。

無言でふたり、見つめあう。
ヤカンがお湯が沸いたのだと盛んに湯気を噴き出しはじめた。

「……はぁーっ」

しばらくしてため息をついた宣利さんは激しく悩んでいる様子で髪を掻き回した。

「そんな目で見られたら、ダメって言えなくなっちゃうだろ」

ヤカンの火はそのままに、彼は私と視線をあわせずにお茶の準備を始めた。

「ほら、なにが飲みたい?
花琳が飲みたいのを淹れてあげる」

さっきの返事はイエスなのかノーなのか判断しかねる。
けれど尋ねられて答えないわけにはいかない。

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