愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
ぴたりと箸が止まり、じっと彼が私の顔を見る。
けれど少ししてまた、食べ出した。

「え、えっと……」

それ以上、尋ねる勇気もなく、もそもそと私も食事を続けた。

「ごちそうさま」

食べ終わった宣利さんが、丁寧に手をあわせる。

「美味しかった」

椅子を立った彼は手早く食器を流しに下げ、ひと言そう言って去っていった。

「……へ?」

ひとりになり、間抜けにも変な声が出る。
渋々、食事をしてくれたのだと思っていた。
しかし、「美味しかった」って?
ただの社交辞令?
それとも喜んでくれた?
ううん、あれだけ私に無関心だった彼が、社交辞令でも美味しかったと言ってくれたのは嬉しい。

「よーし、これからも張り切って作っちゃうぞー」

せめて会社の同僚くらいの関係くらいにはなって、居心地のいい生活をゲットするのだ!



それからも毎日、食事を作って宣利さんの帰りを待った。

「ごちそうさま。
美味しかった」

最初のうちこそ渋られたが、最近は根負けしたのか文句を言わず食卓に着いてくれる。
食事中はいつも無言だが、食べ終わったあとは手をあわせてそう言って、食器を下げてくれた。

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