愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「お腹の子も花琳も僕のものだ。
僕のものが僕から離れるなど許さん。
僕は花琳と復縁する。
二度と離婚はないと思え」

レンズの向こう、強い意志で燃える瞳からは視線は逸らせない。
私を支配し、命じる目に、知らず知らず喉がごくりと音を立てる。
けれどそれが――嫌じゃない。
むしろ心は彼に支配されたがっていた。

「……わかり、ました」

無意識に、了承の返事が口から出てくる。

「よし」

目尻を僅かに下げ、彼は満足げに頷いた。
それで急に、その場の空気が緩んだ。
つい、詰めていた息をそっと吐き出す。

「すぐにでも連れて帰りたいんだが、今は引っ越しの最中だから……」

「引っ越しの、最中?」

それで、指環で引っかかった謎が解けた。
マンションを引き払うのに元私の部屋に入り、指環が置いてあるのに気づいたのだろう。
まあ、それまで一歩も私の部屋に入らなかったのも謎ではあるけれど。

「ああ。
曾祖父の家を継いだんだ。
それで、そちらに引っ越す手配をしている。
マンションはもう引き払って、ここ数日はこのホテル暮らしだ」

「そうなんですね」

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