もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「また言ってる」と、マルティーナはふふっと可憐に笑う。「早く婚約破棄ができるといいね」

「あぁ。そのためにも、あの方からいただいたあれ(・・)をあの女に使ってみているんだが……」

「上手くいってない、ってことなのね?」

 ダミアーノは頷いた。

「数人の使用人に試してみたら確実に効果があったのだが、あの女だけには効かないようだ」

 マルティーナは「うーん」と少し首を傾げてから、

「……だったら、いっぱい使ってみたら?」

「どういうことだ?」

「家庭教師からマナ中毒のことを習ったの。今、若者のあいだで問題になってるって」

 魔力耐性のない人間が大量のマナを短時間に一気に浴びると、中毒症状を起こす。それは精神がどこかへ飛んでしまうように快楽を伴い、一部で流行していたのだ。

「そうか……!」ダミアーノの顔がパッと明るくなる。「あの女をマナ中毒にして、判断力が弱まった時に仕掛ければいいのか」

「そうよ! もし中毒から戻らなかったら、それを理由に婚約破棄できるし〜」

「そうだな。マナ中毒でトリップして、男たちと遊んでいた女に仕立て上げればいいものな」

 ダミアーノの胸に希望の光が灯った。今の状態で使えないのなら、無理矢理にでも使えるようにすればいい。この作戦だと、どう転んでも自分には有利に働くだろう。

 あの女が大罪で処刑されようと、中毒で廃人になろうと、自分にはどうでもいい。

 関係ない。




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