もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

19 皇太子の婚約と嵌められた公爵令息

 キアラ・リグリーア伯爵令嬢とダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息の婚約解消は、意外にもすんなりと進んで行った。

 ヴィッツィオ家は、皇太子が提示した破格過ぎる手切れ金に溢れるほどに歓喜して即快諾。皇太子側が用意をした婚約解消についての誓約書も笑顔でサインをした。

 一方、リグリーア伯爵家も、キアラの想定外に両親は大喜びで迎えた。勘当を覚悟していた彼女は拍子抜けだった。

 公爵家よりも遥かに高貴な家柄――娘が皇太子妃になるという破壊力は凄まじいものがあった。彼らは驚愕し、恐れおののき、興奮して、天まで舞い上がった。

 加えてレオナルドは「支度金」と称して、伯爵家にも金貨2000枚を用意した。
 だが実のところは、婚姻に関する諸々の費用は皇太子側が全て負担をするので、これは騒ぎを起こした謝罪と口止め料のようなものだった。

 これも効果抜群だった。今では伯爵と夫人は、娘を立派な皇太子妃にすべく情熱を燃やしている。
 ちなみにこのことを後になって知ったキアラは、レオナルドへの返済にこれも含めると言って聞かなかった。


 内々に話を進めて、それから更に半月後。
 ついに皇太子と伯爵令嬢の婚約の成立が発表される。

 キアラとレオナルドの復讐の第一歩である――仮の婚約が。

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