助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

カルチオラの関

 もし、上空からその場所を見渡したなら……左右を高い崖に挟まれた山道に延々と続く人々の長い行列が見られただろう。そこでは、隙間を塞ぐように堅固な砦が設けられ、多くの王国兵が通行人と荷物を検めている。
 現在、このカルチオラの関では、厳戒態勢が敷かれていた。
 通常ならば通行税を支払うだけで素通りできる民間人ですら、詳細な身体検査の上手配書と顔を比べられ、疑わしいものは拘留されて何時間もの取り調べを受けているようだ。

 一組一組念入りに調べられているせいか、門の外にまで長い列が伸びる。
 その中に一つの家族の姿が見受けられた。

 若い夫婦、年老いた老人に小さな子供の四人。
 徒歩の彼らは、荷物を背負った標準的な旅人に見える。
 やがて順番が回ってきて、兵士がその家族に尋ねた。

「あ~……名は? どこからだ?」
「関の近くのオルゴーという村から来ました、ラスディオ一家と申します。私はトルス、こちらは妻のアニス。そっちは父のオイゲンに、息子のロイス。私たちは毎年この時期、関向こうのネシェナという街で行われる祭りに参加するのが恒例となっていまして」
「ふむ。では荷物を検めさせてもらう」
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