助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

繋がれたままの過去

 通りに連なる出店から、競うように大きな声が張られ、メルたちの鼓膜を刺激している。

『お客さんたち見とくれっ、このボリューム! イムール村のすこやかな環境で育てた、美味しい豚ソーセージだ! 皮はぱりっと中はジューシー! 一口食べたら止まらなくなる美味しさだい! 何本でもいけちゃうよ!』
『うちのエッグノックは絶品さぁ! まずは温かいものを身体に入れて、ゆっくり祭りを楽しんで行ってくんなぁ!』

 甘い匂いと湯気に惹かれて、エッグノック――牛乳をふんだんに使い、シナモンや卵などで味付けしたクリーミーなホットカクテルを、メルたちはまず最初に購入した。一口サイズの器からほんのりと薫るリキュールの匂いは、祭りで浮き立つ気分を高めてくれる。

「おお、色々あるな。焼きソーセージ、サンドイッチ、魚のフライ……あれは果汁を混ぜたジュースか? む、皆手掴みでかぶりついておる……マナーは悪いがそういうものか?」
「ちゃんと手が汚れないよう、紙で包んだりはしていますよ。あ、パイなんかも売ってる……。羊ひき肉(シェパーズ)牛ひき肉(コテージ)、どちらがお好みですか?」
「牛がいいな。あのレモン入りの果実水も買ってくれるか?」
「はい、後で」
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