助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「いや、大丈夫です! あれは白旗、攻撃の意思はないという表明。殿下、あれは味方です!」
「誠か……!」

 ふたりの顔に喜色が浮かび、心底ほっとしたメルは緊張で笑う膝を掴んだ。
 そしてしばらく待つうち、先程とは違う隊章を付けた部隊と共に、ひとつの騎馬が近付いてくる。

「フラーゲン卿、お迎えに上がるのが遅れて申し訳ない……! 殿下、久しいですな。御身の無事を確認でき、重畳にございます」
「ボルドフか!」

 重そうな甲冑を着込んだ壮年の巨漢が馬から降り、ラルドリスの前に畏まると、懐かしむような目をして頷いた。
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