悪魔なあなたと結婚させてください!
その言葉に驚いて顔を上げる。
アレクが心配そうな顔をしているのがわかって、さらに驚いた。

こんな顔をするときもあるんだ。
「そ、そんなことないよ。大丈夫」

最近では会社内でろこつな嫌がらせを受けることは少なくなってきていた。

あの日、幸がしっかりと発言したおかげで、周りも気を使っているのがわかる。

「そうか」
アレクがホッとしたように表情を緩ませる。

その変化に幸はドキドキしていた。

アレクが自分のことをそんなに気にかけるようになるなんて、思ってもいない展開だ。

「あ、あのさ。私のことが気になる?」
「そんなの当たり前だろ。お前は俺のご主人だからな」

キッパリ言い切るアレクに少しだけ落胆してしまう。

ご主人だからとか、そういうんじゃなくてただ1人の女として見ていてほしかったな。

なんて思うのはわがままだろうか。

そうこうしている間に出勤時間が迫ってきていて、幸は慌てて準備を始めたのだった。
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