腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

隼瀬君と階段を降りると、入ってきた時と同様に玄関前で黒北さんが佇んでいた。



「雅様、お見送りは私が……」


「いや、良い。エントランスまで俺が見送る」


「……かしこまりました」


「それと、黒北。誰であろうと客人に対して無礼な言動は慎め。良いな?」



ハッとしたように黒北さんは私を見つめると、唇をキュッと強く結び、「気分を害してしまい、申し訳ありません。雪平様……」と深々とお辞儀した。



「あ、いえいえ……」


「次から気を付けろよ」


「……はい………」



やっぱり黒北さんって私の事嫌いなんだなぁ。

謝っては居たけど、反省してると言うより隼瀬君にバレた事に対しての恥ずかしさが上回ってるような感じがする。

自分が仕えてる人間が同級生と仲良くしてるのがそんなに嫌かね。


そう思いながら玄関の扉を開けて外に出ると、雨はちゃんと止んでいるようだった。


黒北さんが植えたであろう花々を眺めながら庭園を歩くと、いつもの鉄の扉が見えてきた。

隼瀬君が鉄の扉を開け、私も後に続いて扉の外に出た。

なんだか、あの扉を抜けると一気に現実に戻ってきたなぁって感じがするよ。

< 116 / 168 >

この作品をシェア

pagetop