腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あー、行った行った。和泉に会いにってよりかは猫に会いに行ったんだけど」


「は?猫?」


キョトンとした顔で向坂君を見る慎君と佐原君。


「和泉ってSNSで猫のアカウントあるぐらい猫好きなんだよ。それで俺も猫好きだから、猫を見るためにお邪魔させて貰ったんだ」


「わざわざ女の家に行って猫見るだけ?本当かよ」


「本当だよ、ほらこれ猫の写真」



そう言って携帯を佐原君と慎君に見せた。

私も様子を伺いながらそーっと遠くから携帯を覗き込むと、確かに二匹の猫の写真が映っている。



「まぁ、確かに猫の写真だけど……」


「にしても、猫に会いに行っただけの割にはえらい入れ込み方だったな、和泉」


「彼女誰にでもフレンドリーだから。倉木さんも俺のせいで迷惑かけちゃったみたいでごめんね?」


「……えっ?あ、うん……私の方こそ、騒がしくしてごめんなさい」



倉木さんはいきなり自分に振られると思ってなかったのだろう。
驚いたように目を見開かせ、少し顔を赤くしながら気まずそうに目を逸らした。

結構無理な言い分のように聞こえるけど、飄々とした態度の向坂君に、皆も実はそうなんじゃないかって思ってきているみたいだった。

なるほどと、合点がいったように頷く慎君。
対して、佐原君は全く納得がいってないけどもう詰めるのも面倒になってきたようで、ふんと鼻を鳴らして口を噤んだ。

後で実際はどうなのか本人に聞いてみるとしよう…

それ以降、朝の件を追求する人は居なかった。
誤解が解けたというよりは、触れちゃいけない雰囲気があって皆触れてないといった感じに見える。



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