お嬢様は今日も美しい
「君は確か、マリエ・テンベルク子爵令嬢だったね」
殿下に名前を呼ばれて私は礼を取った。
「ルーカス第一王子殿下よりお声をかけていただき光栄に存じます」
「堅苦しい挨拶抜きで。テンベルク子爵令嬢はローシャス公爵令嬢の侍女でもあったね。声を上げたところを見ると何か思い当たる節でもあるのか?」
「はい。心当たりといいますか……」
記憶を手繰って引っかかったものがあった。
王宮で二人でお茶をしたという話はある意味、間違いではないけれど、厳密にいえば違うともいえるのだけれども。
「心当たり? 一体どういうことなんだ?」
殿下の視線が痛い。咎められているようで。生徒たちの視線が痛い。好奇心と疑念に晒されて。
「ハハハッ。やっぱりそうか。お前たちはできてたんだな」
王太子の嘲笑う声が聞こえた。
「そういうことではなくて……」
お嬢様は目をぱちくりとして私を見ている。意味が分からないというような表情で。
「詳細を話してもらわないと何とも言えないな。俺には心当たりがないのだから」
そうかもしれませんね。
殿下にとってはあの日のことは取るに足らない出来事だったでしょうからね。
王太子は勝ったとばかりに口の端を上げてニヤついている。