お嬢様は今日も美しい
なんと、くだらない。
お嬢様は表情に乏しい方ではございますが、だからと言って全然お笑いにならないというわけではありません。
約束の時間になっても現れない王太子を待つ時間がどれほど惨めなものか、本人にはわからないのでしょうね。
どこで見ていたのかわかりませんが、そんなお嬢様を見物して嘲笑っていたのかもしれない。
ホント、性格悪いわ。
沸々と怒りが湧き上がってくる。許されるなら、思いっきりぶん殴ってやりたいところ。
「おっしゃっている意味が分かりませんわ」
鈴を転がすような澄んだ声が微妙な空気を払った。
「意味が分からぬとは。お前は俺の言葉を理解できないのか?」
「いえ、そういう意味ではございません。わたくしとお話しをして下さったのは側妃様でございます。第一王子殿下もお言葉を下さいましたが、ほんの一言、二言程でした。笑いかけるといったものがどういう状況だったのかわかりかねますが、側妃様のお話がとても微笑ましい内容だったので、自然と笑みがこぼれたのかもしれません」
「そうやってごまかすのか?」
「ごまかしているわけではございません。事実を述べているだけでございます」
動揺の欠片もなく毅然な態度で対応するお嬢様。凛としたお姿は神々しくも美しい。
「そんなわけあるか。お前たちは今もこそこそと会っているんだろう。いい加減に認めろ」
「認めるも何も、そのような事実はございません」
流麗な声音が辺りに響く。
感情的に喚く王太子と冷静沈着に対処するお嬢様。真逆の行為に生徒たちの王太子への眼差しが侮蔑を含んだものへと変わっていった。