お嬢様は今日も美しい
「今頃、側妃様は喜んでおいでかしら?」
紅茶を口に含み味わってから、音もなくカップにソーサーに戻したお嬢様がポツリと零す。
そのことについて思考を放棄したばかりだったので、動揺したけれど、ほんの少し、逡巡した後、私は遠慮がちに答えた。
「……そう、かもしれません」
「望む通りの結果はわたくしも同じ。ここにきて王太子教育を受けていなかったことも功を奏したわね。お父様のおかげだわ」
婚約後、すぐにでも王太子妃教育をとの要求をした王家に対して、娘が王太子教育で肩身の狭い思いをしないように公爵家で教育を施し送り出したいとの建前上の要望を出して王家側にその条件を呑ませた。公爵家としては少しでもリスクを排除しての婚約破棄を狙っていましたからね。
陛下も筆頭公爵家の後ろ盾をもらうために強制はできなかったようで、公爵家の言うとおりにするほかはなかったようです。
約束では一年後に王太子妃教育は始まる予定でしたから、その前に今回の白紙撤回になったというわけです。
王太子がやらかしてくれてよかったです。そのことに関してだけは感謝ですね。