お嬢様は今日も美しい
「ところで、準備は進んでいるかしら?」
「はい。もちろんにございます。ご予定の日には出発できるように準備は済んでおります」
「そう、よかったわ。楽しみね」
お嬢様は来週の初めに隣国の帝国へと留学なさいます。私も侍女兼留学生として同行致します。これは一年前に決まっていたこと。王太子妃教育を引き延ばすための方策でもあったのですが、お嬢様は留学をとても楽しみにしていらっしゃったらしく、そのまま続行することになったのです。
「ふふっ。王太子殿下の婚約者ではないのですものね。わたくしはただの公爵令嬢だわ」
ゆっくりと庭へと視線を移すと、心底、嬉しそうな笑みを浮かべたお嬢様。
「お庭を散歩いたしませんか? 今日はとてもお天気がいいですし、良い気分転換になるかと思われます」
「そうね。わたくしもそう思っていたところだったのよ」
お嬢様と私は一緒に庭へ散歩に出かけました。
日差しが少し強いので日傘をお嬢様に差し向けながら、ゆっくりと庭の花々を見て回ります。
お嬢様は花々の陰からちょこんと顔を出す小さな蕾にも目を向け愛おしそうに指に触れるお姿は、慈悲深い天使のようにも見えて、感慨深く胸が熱くなりました。
留学すればしばらくお屋敷を離れることになるので、少しでもお屋敷とこの庭の様子を目に焼き付けておきたいと思っていらっしゃるのかもしれません。
しばし、季節の花が咲き乱れる庭を二人で散策しながら、平穏な時間を満喫しました。