恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
二人はさくらベーカリーを出ると、車に戻った。

「壱世さんも初耳なんですか? 再開発」
「ああ。そんな予算も計上されていない」

「これから進めるんですかね?」
「いや、だとしても……」

これだけの大きな話が市長である壱世の耳に一切入っていないというのはおかしい。

「木菟屋さんも同じ理由ですね、きっと」
胡桃はがっかりしたようにこぼす。
「木菟屋……」
壱世はぽつりとつぶやくと、カーナビにベリが丘のマップを映した。

「胡桃、『ベリが丘びより』のスポンサーがいくつも降りてるって言っていたよな」
「はい……そうですけど?」
急な質問に不思議な顔をする。

「どこの店や会社か、この地図で指せるか?」
胡桃はコクッと頷く。

「全部把握してますから。えっと、さくらベーカリーさんでしょ、それにジャルダン・ド・レザン、それから……」

つぎつぎに場所を指差していく。
その場所がある箇所に集中しているのが、小さな地図だとよくわかる。

「あれ? これってもしかして」

壱世が頷く。
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