恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
それから胡桃は壱世に商店街の店を紹介してまわった。

「ベリが丘で新鮮な魚が食べたいって思ったら魚心(うおしん)さんですね。ここでは魚屋さんをしてて、ビジネスエリアには直営のお寿司屋さんがあります」
「あ、寿司屋の方は行ったことがある」
「えー羨ましいです! 高級店だから私は取材以外で行ったことないです」

店を指さしたり、店主と話したりしながら歩く。

「ベリベジさんは最近できた八百屋さんです。この商店街は昔ながらのお店が多いので、ちょっと珍しいです。青果と一緒に売ってるフルーツゼリーがオススメですね。カラフルで映えるからもうちょっと話題になってもいいのになーって感じです。次に商店街特集をするときは絶対大きく扱いたいんです」

「さすが、食べ物に詳しいな」
壱世は素直に感心して言う。

「食べ物だけじゃないですよ。そこの古本屋さんは古書の品揃えもなかなかマニアックで素敵ですけど、全国各地いろんな地域のフリーマガジンを取り扱ってるので中学生の頃から入り浸ってました。それで、フリーマガジンっていいなって思ったのが私の原点です」
「へえ」
「ちなみに今はベリビも置いてもらえてます」
胡桃は自慢げにピースをしてみせた。

「あ、胡桃ちゃん!」

胡桃に気づいた古本屋の店主の女性が声をかけてきた。

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